授業の枠を超えて:夢に向かうAPU生たち - 記事一覧 | APU 立命館アジア太平洋大学
授業の枠を超えて:夢に向かうAPU生たち
ある日の真夜中、青白い光が何かを映し出していた。・・・彼だ。ヒーターで温められた部屋でなぜかジャケットをまとい、大粒の汗をかいているのが見える。11月の寒さに凍えるよりは遥かに良い選択かもしれない。そんな彼の目は、膝に置いた黒いタブレットに描かれた線をじっとにらみつけていた。
「また描き始めたのかい?次は何?」と僕は尋ねた。
「絵だよ」
「絵?最近読んだマンガ?」
「はぁ・・・」
「じゃあさ、いつ書き始めたの?」
「3年前」
と答えた彼は、玉のような汗を流しながら、再び絵を描き始めた。
「それって、この前言っていた漫画家イベント用の?」
「そう」
「どう?売れそう?」
瞬間、彼は手を止め、僕をじっと覗き込んできた。しかし、すぐにタブレットに視線を戻すと、狂ったように笑い、首を振った。
「誰も俺のマンガなんて買うわけないだろ」
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彼の名前は、Angga。インドネシア出身の彼はとても仲の良い友人の一人で、今はルームメイトでもある。昼はAPMの2回生として会計学を学び、夜には漫画家を志して日々努力している。日中もスケッチブックは常に持ち歩き、空き時間をみつけるとその場でひらめいたアイデアを書き出すほど。タブレットのある家まで帰る時間がもったいないらしい。
僕は彼の勇気を称えたい。彼は大分で行なわれるマンガイベントでの厳しい競争にさらされる。ただでさえ外国人として日本のイベントに臨むという不利な状況の中、競う相手は彼よりも数段画力も販売実績も上の相手ばかりなのだから。
おそらく、全く売れないと彼が塞ぎ込んでいる要因はこれだろう。けれど、それだけのことで彼はそんなに頭を悩ませているのだろうか?きっと、そうではありません。
勉強以外のことにも情熱を傾ける彼のような人はAPUに数多く存在する。カフェテリアで目立たないようにノートパソコンやタブレットで絵を描いている学生や、他大学との試合に向けて日々汗を流す学生もいる。また、マルチカルチュラルウイークのメンバー達が、母国の文化を紹介するだけのイベントを最高の演劇に仕立て上げるようなことはAPUでは当たり前のこと。
かくいう自分も舞台や脚本などを手がけるクリエイティブな分野で働きたいと思っているため、自分の手が空いた時には彼の原稿を手伝うようにしている。
僕達の共通点は何かって?それは、勉強をするためだけに日本へ来たのではないと理解していることだと思う。僕達にはそれぞれ勉強以外にも情熱をもって取り組んでいる趣味があるし、それぞれの生き方がある。そしてなにより、何をするにも、今を上回る時間はないのだ。
僕達は、伝統と最新技術が共存する希有な国で、世界で最も国際的な環境の一つで学んでいる。ここは、自分自身を成長させるのに本当に素晴らしい場所だ。本や理論ばかりに捕らわれていては、ここでの可能性の半分を無駄にしてしまう。
大学では成績が重要だ、なんてわかりきったことを議論するつもりはない。APUは、ただ学ぶためだけの場所ではないのだ。僕達は、リアルな世界を実体験できるこの環境で、夢をみつけるためにいる。誰も止めはしない。夢中になろう(もちろん、ほどほどに。何か問題が起きたらあくまで自己責任なので)。APUの学生は、自分の可能性を広げる機会に恵まれている。なぜなら、大学のモットーは、「shape your world」なのだから。
APUでしっかり勉強してるかって?当然。けれど、それ以上に楽しんでるよ。
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「イベントはどうだった?」と帰ってきた彼に尋ねてみた。
「いくつか売れたよ!」
彼は誇らしげにニヤリと笑い、僕の両手を掴んだかと思うと、興奮を抑えきれず飛び跳ねて喜びをかみしめていた。
Kilamedia Irwantoro はインドネシア出身の2回生です。彼は、APUのソーシャルメディアユニットのメンバーで、定期的にブログに寄稿してくれています。別府の温泉愛を綴った彼の前回の投稿もぜひご覧ください。